大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)1227号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、原告主張の(一)の事実及び(二)の事実中原告主張の日時場所において原告会社の運転手山本正利の運転するタクシーと被告の運転する自動車が衝突し原告会社のタクシーが破損しその乗客が負傷した事実は当事者間に争なく、<中略>そして証人中尾の証言によると一般にタクシー業者が旅客運送中の衝突事故により乗客に損害を及ぼした場合には、乗客は自分の乗車していたタクシー業者に対しその損害の賠償を求めるのが通常であり、その場合右賠償を求められた業者としては、右事故が衝突事故の相手方の過失により生じた場合にあつてもそれを理由としてその支払を拒むことは事実上困難であり、自らの過失に基く場合と同様その賠償をしている実情にあり、本件の場合にも原告は乗客の再三の督促の結果やむなくこれを支払つたものであり、且つ原告が乗客等に支払つた原告主張の四の(3)乃至(5)の金額も本件乗客等の蒙つた負傷の部位程度等から判断して相当であると認められるから、原告の右(3)乃至(5)記載の支出も原告が本件事故により蒙つた損害と解すべきものである。
三 過失相殺の主張について
山本正利運転手は本件事故当時タクシー業を営む原告会社の従業員であり、本件事故が同人の原告会社の業務執行中に生じたものであること当事者間に争がないところ、かかる場合においては、若し右山本運転手にも過失が認められる場合には、同人を原告会社と一体と看做し右山本の過失を被害者たる原告の過失と同視し、これを本件事故による原告の損害額を算定するにつき斟酌すべきものと解するのが相当であるが、原告本人尋問の結果以外には本件事故生につき右山本にも過失があつたとの事実を認めるに足る証拠は全くなく、右原告本人尋問の結果は<証拠>に照し到底措信することはできない。そうすると被告の過失相殺の主張は理由がない。 (谷野英俊)